9月4日、大型で強い台風21号が近畿地方を直撃し、各地で大きな被害が出た。
特に、被害が大きかったのが、関西の空の玄関口である関西国際空港。
台風21号により、「50年に1度」と言われている高潮が発生し、滑走路や駐機場などが広範囲に冠水し、最大50cmまでつかった。
台風直撃以降、一時閉鎖されていたが、本日7日、一部の国内線で運行を開始した。
また、関西空港の連絡橋に、停泊していたタンカーが衝突し、連絡橋の一部が損傷。
現在、損傷を免れた片側車線で緊急車両のみ通行できるが、一般車両の通行は認められていない。
今回の台風直撃、奇しくも1994年9月4日の関西国際空港の開港日と重なった。
当時、世界にも例のない海上空港として誕生した関西国際空港。
そこで、海上空港の問題点と、他の海上空港は問題ないかどうか、調べてみた。
復旧の見通しについて
7日より、一部の国内線で運行を再開した。
また、8日は、一部の国際線で運行再開予定。
台風被害が比較的軽微だった第2ターミナルやB滑走路(LCC専用)を利用して、先行再開した。
また、電気設備水没等の大きな被害のあった第1ターミナルは、被害の軽い区画から部分運用を再開する方針。
冠水したA滑走路は、9月中旬の暫定運用を目指している。
空港への交通手段は、神戸空港からの高速船と、対岸のりんくうタウン駅からのシャトルバスに限られる。
鉄道は、4週間後の再開を目指している。
連絡橋の完全復旧の見通しはたっていない。
海上空港の問題点
今回の台風21号による関西空港被害により、改めて海上空港の問題点が浮き彫りとなった。
泉州沖の人工島にある関西空港の長年の問題点は、「地盤沈下」。
海底は、1期島(1994年開港)で平均深さ18m、2期島(2007年開港)で24mにわたり、沖積層という地盤の緩い粘土が堆積。
ただ、その沖積層の下には洪積層があり、自然の状態で長い時間かけてゆっくり沈んでいる。
(洪積層はあまりにも深いため、地盤改良は不可能)
開港以来、1期島は最大3.43m、2期島は最大4.14m程、沈んでいる為、これまで、護岸のかさ上げ工事や補強工事など進めてきた。
しかし、今回、「50年に1度」の想定を上回る「高波」が押し寄せ、空港島を襲った可能性がある。
地盤沈下対策は施していたものの、今回の高波による被害は想定外だったのだろう。
他の海上空港について
『全国空港ウォッチングガイド2013』、『空港大図鑑』によると、日本の海上空港は以下の5つが挙げられる。
(以下、『全国空港ウォッチングガイド』より抜粋)
●長崎空港(1975年開港)
世界で始めての本格海上空港として、大村湾に浮かぶ小島(箕島)を造成し、海面の一部を埋め立てて建設。
●関西国際空港(1994年開港)
完全な人工島として造成されたものとしては国内初の海上空港。
●中部国際空港(2005年開港)
名古屋市から南へ35km離れた知多半島の常滑市沖に立地した海上空港。
●神戸空港(2006年開港)
三宮から約8km南のポートアイランド沖合いに建設された海上空港。
●北九州空港(2006年開港)
北九州の中心から東南東約15kmの周防灘海上に位置した海上空港。
海上空港は、空港周辺に民家がない為、飛行機の騒音・振動による住民への影響が少ない反面、台風・高潮・津波等発生した場合、空港としての機能を損ねてしまうリスクが常に付きまとうことを念頭に置くことが重要である。
まとめ
今回の台風21号は、各地に様々な被害をもたらした。
中でも、今回の関西空港の被害は、今後の関西圏の物流や経済情勢、観光業界等に、大きな影響を与えたのではないかと思われる。
1日も早く復旧させることはもちろん大切であるが、一番重要なことは、「利用者の安全の確保」である。
外国人にとって、空港は、日本の「玄関口」である。
その「玄関口」の印象が、「日本」という国の印象に繋がることを認識し、安心して日本に滞在できるよう、心掛ける必要があるのではないか、と思う。